05.15.23:03
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06.30.01:13
【シギ】ぼくがおきてるりゆう。
ヒトってねてるあいだにもあたまがはたらいてるんだって、だれかがゆってた。
ねてるあいだにみるのがゆめで、ゆめってあたまのなかみをせいりすることなんだって。
にいさんのゆめは、しろくてあかい。
しってるんだ。ときどき、じぶんのさけびごえでおきてるってこと。
しってるんだ。ときどき、ゆめをみながらないてるってこと。
わすれたいのに、わすれさせてくれないんだよね。
にいさんのはねがきえてて。
おとーさんとしんゆーがまっしろなゆきにねっころがってて。
そのゆきが、ゆうやけのおそらみたいにまっかになっていって。
まちじゅうのひとたちが、まっくろなゆきのうえにおやすみしてて。
でも、だいじょうぶだよ。ぼくがおきてるから。
ぼくがおきてれば、ゆめはみないでしょ。
まっくらでしずかなおへやで、にいさんはねむれる。
ねてるあいだにみるのがゆめで、ゆめってあたまのなかみをせいりすることなんだって。
にいさんのゆめは、しろくてあかい。
しってるんだ。ときどき、じぶんのさけびごえでおきてるってこと。
しってるんだ。ときどき、ゆめをみながらないてるってこと。
わすれたいのに、わすれさせてくれないんだよね。
にいさんのはねがきえてて。
おとーさんとしんゆーがまっしろなゆきにねっころがってて。
そのゆきが、ゆうやけのおそらみたいにまっかになっていって。
まちじゅうのひとたちが、まっくろなゆきのうえにおやすみしてて。
でも、だいじょうぶだよ。ぼくがおきてるから。
ぼくがおきてれば、ゆめはみないでしょ。
まっくらでしずかなおへやで、にいさんはねむれる。
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06.15.13:31
【記憶のカケラ】夕暮れに聞こえる歌
牢の中から聞こえる声。
崖の向こうまで響く幼い高音。
たいようおちて あいいろせかい
のこるオレンジ かすかにたより
おうちへかえろ いそいでかえろ
さえずりきえて まっくろせかい
ふわふわぬくい うもうのふとん
もぐってねむろ うたききながら
あのこがないた むらさきのそら
しろいひかりに うたごえふえる
いってらっしゃい あさがはじまる
「・・・それ、子守唄だろ?」
白い翼を羽ばたかせて、少年が一人、牢のそばに降り立った。翼をしまい、歩み寄ってくる。牢の中で歌っていた少年も歌うのを止め、柵のそばまで近寄った。
「ここに来たら、また怒られるんじゃない?白嵐」
「構うもんか。村にいたってつまらないしな」
からかうような語調に、軽い返事。顔を見合わせてくっと笑う。
柵にもたれるように腰掛けたのは白嵐と呼ばれた少年。オレンジ、白、紫、藍色、きれいなグラデーションを描く空を見上げた。くるりと牢の中の少年に顔だけ向けて。
「お前、いつもそればっか歌ってんのな。」
「うん、これしか知らなくて。ははさまが昔歌ってくれたんだ」
問いかけに、苦笑いを添えて返事をする。
「僕もいろんな歌が知りたい。村の皆みたいに、たくさん歌いたい」
でもそれは無理な願いだよね、そう言って肩を落とす。
その様を見てすっくと立ち上がり、大きく息を吸い込んで。
歌えや歌え 今宵は祭り
騒げや騒げ 今宵は宴
翼広げて 扇に変えよ
月夜に響け 我らが歌声
寝てるのも起こしてつれて来い
みなで騒がずなんとする
病気だろうと飛び起きようぞ
一夜限りの大乱響
踊れや踊れ 風舞うほどに
飲めや食えや 動けぬほどに
翼羽ばたき 嵐に変えよ
月夜に響け 我らが歌声
その大きな声に、牢の中の少年は驚いて目を丸くした。
そんな少年の方を向いて、にっと白嵐が笑う。
「歌なら、俺が教えてやるよ」
思ってもいなかった言葉に、一瞬きょとんとした顔をして。ちょっとの間を置いて、真一文字に結ばれた唇が緩やかに弧を描いた。
「ありがと、・・・でも、あんまり上手じゃないね。とってもがらがら声」
「なっ、そんなこというと教えてやんねーぞ!!」
あははは、楽しそうな笑い声が響く。「お前ももうちょっとしたらそーなるんだぞ」とちょっと拗ねたように、再び牢に背を向けて座る白嵐に、背を合わせるように少年も牢にもたれかかる。
「あはは・・・僕にそんなことをいうなんて、ほんとにおかしな人だね、キミは」
呆れたようにため息混じりにもらせば
「いーんだよ。俺がやりたくてやってんだから」
ふん、と鼻息荒く返事が戻ってくる。
背中合わせで表情は見えなくても、互いが笑っていることだけは雰囲気で感じ取れて。
空が真っ暗になって、さえずりひとつ聞こえなくなって。
静かな世界に、祭りの歌が響いていたという。
崖の向こうまで響く幼い高音。
たいようおちて あいいろせかい
のこるオレンジ かすかにたより
おうちへかえろ いそいでかえろ
さえずりきえて まっくろせかい
ふわふわぬくい うもうのふとん
もぐってねむろ うたききながら
あのこがないた むらさきのそら
しろいひかりに うたごえふえる
いってらっしゃい あさがはじまる
「・・・それ、子守唄だろ?」
白い翼を羽ばたかせて、少年が一人、牢のそばに降り立った。翼をしまい、歩み寄ってくる。牢の中で歌っていた少年も歌うのを止め、柵のそばまで近寄った。
「ここに来たら、また怒られるんじゃない?白嵐」
「構うもんか。村にいたってつまらないしな」
からかうような語調に、軽い返事。顔を見合わせてくっと笑う。
柵にもたれるように腰掛けたのは白嵐と呼ばれた少年。オレンジ、白、紫、藍色、きれいなグラデーションを描く空を見上げた。くるりと牢の中の少年に顔だけ向けて。
「お前、いつもそればっか歌ってんのな。」
「うん、これしか知らなくて。ははさまが昔歌ってくれたんだ」
問いかけに、苦笑いを添えて返事をする。
「僕もいろんな歌が知りたい。村の皆みたいに、たくさん歌いたい」
でもそれは無理な願いだよね、そう言って肩を落とす。
その様を見てすっくと立ち上がり、大きく息を吸い込んで。
歌えや歌え 今宵は祭り
騒げや騒げ 今宵は宴
翼広げて 扇に変えよ
月夜に響け 我らが歌声
寝てるのも起こしてつれて来い
みなで騒がずなんとする
病気だろうと飛び起きようぞ
一夜限りの大乱響
踊れや踊れ 風舞うほどに
飲めや食えや 動けぬほどに
翼羽ばたき 嵐に変えよ
月夜に響け 我らが歌声
その大きな声に、牢の中の少年は驚いて目を丸くした。
そんな少年の方を向いて、にっと白嵐が笑う。
「歌なら、俺が教えてやるよ」
思ってもいなかった言葉に、一瞬きょとんとした顔をして。ちょっとの間を置いて、真一文字に結ばれた唇が緩やかに弧を描いた。
「ありがと、・・・でも、あんまり上手じゃないね。とってもがらがら声」
「なっ、そんなこというと教えてやんねーぞ!!」
あははは、楽しそうな笑い声が響く。「お前ももうちょっとしたらそーなるんだぞ」とちょっと拗ねたように、再び牢に背を向けて座る白嵐に、背を合わせるように少年も牢にもたれかかる。
「あはは・・・僕にそんなことをいうなんて、ほんとにおかしな人だね、キミは」
呆れたようにため息混じりにもらせば
「いーんだよ。俺がやりたくてやってんだから」
ふん、と鼻息荒く返事が戻ってくる。
背中合わせで表情は見えなくても、互いが笑っていることだけは雰囲気で感じ取れて。
空が真っ暗になって、さえずりひとつ聞こえなくなって。
静かな世界に、祭りの歌が響いていたという。
04.23.19:55
【記憶のカケラ】数えて、消して
ひぃ
ふぅ
みぃ
地面に書いた正の字。
昨日は一人、今日は二人、明日は何人かな。
数えるのは、僕を見に来た人たち。
見て帰る人もいれば、何か言っていく人もいる。
どうせ、「お前なんかいなくなってしまえば」、そんなことばっかりだけど。
日が暮れて、地面に書いた文字を手で消して。
明日も同じことの繰り返し。
僕はみんなの見世物。
体は心の入れ物。
心は・・・溢れて壊れてしまった。表情は忘れてしまった。
ばらばらの破片は、片付けられずに散らばったまま。
笑ったって、泣いたって、無駄でしょ?
だってどうせ怒りを買うだけだもの。
僕が消えてなくなれる時、笑えるのかも。僕も、誰も。
ふぅ
みぃ
地面に書いた正の字。
昨日は一人、今日は二人、明日は何人かな。
数えるのは、僕を見に来た人たち。
見て帰る人もいれば、何か言っていく人もいる。
どうせ、「お前なんかいなくなってしまえば」、そんなことばっかりだけど。
日が暮れて、地面に書いた文字を手で消して。
明日も同じことの繰り返し。
僕はみんなの見世物。
体は心の入れ物。
心は・・・溢れて壊れてしまった。表情は忘れてしまった。
ばらばらの破片は、片付けられずに散らばったまま。
笑ったって、泣いたって、無駄でしょ?
だってどうせ怒りを買うだけだもの。
僕が消えてなくなれる時、笑えるのかも。僕も、誰も。
04.19.01:00
【記憶のカケラ】幸せを伴う悪夢
イラナイコなのかって?
うん、そうだよ。ぼくがイラナイコ。
君は誰?
ここに閉じ込められてもう3年くらいかな。はっきり覚えてないや。
どうして君はここにきたの?
オトモダチ?なにそれ。
オトモダチ。なかよくなるってことなんだね。
お話してるから、僕らはもうオトモダチなのかな。
イラナイコにもオトモダチは必要?
生まれてこなければよかったんだって。
だけど、しんじゃいけないんだって。
今ここにいる僕は、いきてる?
僕の疑問に答えてくれた「ヒト」ははじめてだ。
おとうさんも、村の人たちも、僕の話なんて聞いてくれない。
どうして君は聞いてくれるの?
あぁ、こういうのがオトモダチなんだね。わかった。
今まで小鳥さんとしかお話したことがなかったから。
君も、いつかはあんな風になるの?
約束をしよう。
僕らは死ぬまで友達だ。
どっちかが死んでも、ずっと友達だ。
――――――殺した場合はどうなのか、聞くのを忘れていた。
うん、そうだよ。ぼくがイラナイコ。
君は誰?
ここに閉じ込められてもう3年くらいかな。はっきり覚えてないや。
どうして君はここにきたの?
オトモダチ?なにそれ。
オトモダチ。なかよくなるってことなんだね。
お話してるから、僕らはもうオトモダチなのかな。
イラナイコにもオトモダチは必要?
生まれてこなければよかったんだって。
だけど、しんじゃいけないんだって。
今ここにいる僕は、いきてる?
僕の疑問に答えてくれた「ヒト」ははじめてだ。
おとうさんも、村の人たちも、僕の話なんて聞いてくれない。
どうして君は聞いてくれるの?
あぁ、こういうのがオトモダチなんだね。わかった。
今まで小鳥さんとしかお話したことがなかったから。
君も、いつかはあんな風になるの?
約束をしよう。
僕らは死ぬまで友達だ。
どっちかが死んでも、ずっと友達だ。
――――――殺した場合はどうなのか、聞くのを忘れていた。
04.11.11:17
「【A日記】青いリボンと白黒のメッセージカード」のその後。
(朝起きてみると、いつの間にやらポニーテールに結ばれていた髪。
寝るときには確かに解いたはずなのだが・・・不思議に思いつついつものように結ぶためにリボンを解けばそれはシギ宛に挟んだ青いリボンで。
それに驚き、慌ててノートを開けば平仮名ばかりで書かれた返事が。
消えた記憶。
ポニーテールと青いリボン。
夢に出てくる己によく似た人物。
自分の部屋を自由に出入りできる。
一つの疑いを持った。
彼は、自分の中にいるのではないか。
この体はトキのもので、そしてシギのものでもあるのではないか。
心の中に耳を済ませてみる。)
「・・・兄さん・・・気付いた?・・・」
(微かに、そう聞こえた気がする。
でもまだはっきりしない。どうなのだろう。
身近に多重人格者がいるだけに、まさかそんな、と思ってしまう。)
シギ・・・君は一体どこにいるのだい・・・?
(微かにそう呟きがもれる。気付くまで、もうしばらくかかりそうだなぁと再び声が聞こえた気がした。)
寝るときには確かに解いたはずなのだが・・・不思議に思いつついつものように結ぶためにリボンを解けばそれはシギ宛に挟んだ青いリボンで。
それに驚き、慌ててノートを開けば平仮名ばかりで書かれた返事が。
消えた記憶。
ポニーテールと青いリボン。
夢に出てくる己によく似た人物。
自分の部屋を自由に出入りできる。
一つの疑いを持った。
彼は、自分の中にいるのではないか。
この体はトキのもので、そしてシギのものでもあるのではないか。
心の中に耳を済ませてみる。)
「・・・兄さん・・・気付いた?・・・」
(微かに、そう聞こえた気がする。
でもまだはっきりしない。どうなのだろう。
身近に多重人格者がいるだけに、まさかそんな、と思ってしまう。)
シギ・・・君は一体どこにいるのだい・・・?
(微かにそう呟きがもれる。気付くまで、もうしばらくかかりそうだなぁと再び声が聞こえた気がした。)